本研究プロジェクトの第1年度に当たる11年度は3つの課題を目標に研究を行った。 第1の課題は、業種別の競争戦略を類型化するために種々の業種の企業に対する広範なインタビュー調査を行った。その結果、売上高の増加(市場の拡大)とビジネスプロセスの変化の間に相関関係があるという仮説を導くことができた。 第2の課題として、従来バランスド・スコア・カードがうまく測定していない組織学習や知識創造能力の測定方法を考案することである。組織学習や知的資産の測定に関する文献のレビューを行って、先行研究で用いている測定方法の整理を行うとともに、知識資産管理で先進的な実務を行っているアメリカン・エキスプレス社の協力を得て、知識創造能力の測定に関する概念フレームワークの展開の作業を共同研究で行った。概念フレームワークを構築できれば、平成12年度には、そのフレームワークにしたがって知識創造能力の優劣を判別する指標をバランスド・スコア・カードに組み込む試み提案し、質問紙調査を使ってその有効性を検証する計画である。 第3に、金融業を対象としてテスト的な質問紙調査を行った。約300の質問紙を送付し、50件の有効回答を得た。戦略の判別に関する質問に対して非常に偏った回答しか得られなかったため、質問紙の設計の際に考えた仮説を検証することは難しい状況となったが、それ以外の点では興味深い回答を得た。基本統計量を求めたのち因子分析を行って、論文にまとめつつある。4月か5月にはしかるべき学会誌に投稿する予定である。
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