本年度には、日本銀行金融研究所のスタッフと続けてきた、日本の金融分野における自己資本比率規制を意識した会計政策(原価法・低価法選択制、土地再評価等)が銀行株価に及ぼす影響についての実証研究をまとめ、公表した。そこで得られた知見は次の通りである。 (1)保有有価証券についての原価法の採用を容認する会計政策は、1988年のブラック・マンデー当時の場合と比べ、株価への影響はほとんどなかった。 (2)土地の再評価は銀行株価に比較的大きな影響を及ぼした。 (3)金融機関への公的資金の注入は、銀行株価、特に財務体質の悪い銀行の株価に強い影響を及ぼした。 こうした実証結果は次のことを示唆している。 (1)銀行株への投資家は以前よりも、時価情報を重視している。 (2)公的資金の注入は財務体質のよい銀行よりも財務体質の悪い銀行を支持する政策とみなされている可能性がある。 次年度は、わが国に本格導入されることになった時価会計、連結決算、税効果会計が銀行の自己資本比率規制に及ぼす影響等について研究を進める予定である。
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