研究概要 |
自己資本比率規制を有効に機能させるためには、自己資本比率を算定する会計測定が実態を適正に反映したものでなければならないという観点から、本研究ではおおむね最近5年間に経営が破綻した12の銀行の破綻前5期の公表自己資本比率を調査したところ、破綻直前期まで自己資本比率の規制水準(国際基準8%,国内基準4%)を超えていた銀行:5行、破綻1期前になって初めて規制水準を下回った銀行:2行、破綻2期前になって初めて規制水準を下回った銀行:2行、破綻3期前になって初めて規制水準を下回った銀行:1行、破綻前5期間中に規制水準を上下した銀行:2行、という結果が得られた。このことは、(1)かりに自己資本比率の現行の規制水準が合理的なものであると仮定すれば、比率を算定する会計基準が銀行経営の健全性を早期に的確に反映するものとなっていないと判断され、(2)会計基準が銀行経営の健全性を的確に反映するものであると仮定すれば、現行の規制水準ないしは自己資本の算定方法に何らかの欠陥があることを含意している。 自己資本比率の会計的側面を扱う本研究は(1)の仮定に立って、12行の破綻前ほぼ5期間の決算内容を検討した。その結果、保有した上場有価証券の評価基準に関しては、1997年3月期までの間に低価法で評価していたのは1行のみで、他はすべて原価法を採用していたことが明らかになった。このほか、貸出金償却についても信用リスクの期間構造を反映した現在価値評価を採用していないことが利益先取り、損失先送りの土壌となっていること、税効果会計の適用の仕方いかんで自己資本の大きさが左右される余地があること等、会計基準のあり方に多くの問題が残っていることが明らかになった
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