本研究は、「わが国金融機関における不良債権処理をめぐる会計的研究」という研究課題のもとに展開されており、平成11年度においては、この課題に関連して、有価証券の時価評価についての研究と、メインバンク・システムについての会計的研究をおこなってきたところである。このうち前者の研究では、市場性のある有価証券の評価損益とその売却損益とは、双方ともキャピタルゲイン(またはキャピタルロス)という経済的特性のうえでは無差別であり、これらを本質的に区別する論理的必然性はないとの結論に達した。また、キャピタルゲイン(またはキャピタルロス)とインカムゲイン(またはインカムロス)との関連についても検討し、それらと、金利リスク、信用リスクとの関連などについて考察した。さらに、投機、投資そして基本提携との関係や、貨幣価値の変動についても検討した。 これに対して、後者の研究では、メインバンク(あるいはメインバンク・システム)が有する会計システムとしての特性について、とくにモニタリングとガバナンスの観点から考察した。この研究では、メインバンクの歴史的経緯から解き明かし、事前的モニタリング、中間的モニタリング、そして事後的モニタリングの視点から、アングロ・アメリカ型のモニタリング・システムととメインバンク・日本型のそれとを対照的に論じた。また、メインバンクの情報発信機能に着目し、その経済的重要性についても検討した。そして、コーポーレート・ガバナンスの観点から、株主と債権者の二面性、および裁判官と管財人としての役割について考察した。さらに、メインバンク・システムを、管理会計システムと財務会計システム、そして規制会計システムとが「統合」されたものとして捉えられることについて検討した。
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