1.ストック・オプション制度解禁のための商法改正というニュースが流れた前後5日間のTOPIXの平均収益率はその前100日間の平均収益率と比較して高かったが、NYSEの動きと比較した場合の異常収益率は有意な値とはならなかった。したがって市場全体として明確な反応を把握することはできなかった。 2.解禁直後にストック・オプションを採用した15社について、取締役会でストック・オプション採用の決議が行われた日の翌日をイベント日と推定して行った結果では、有意な異常収益率を求めることができなかったが、平成9年度、平成10年度に採用した企業全体にサンプルを増やして分析したところ、自己株式方式、新株引受権方式、ワラント債利用方式、すべてについて有意な異常収益率を把握することができた。 3.上記2.のような結果になったのは、必ずしも取締役決議の翌日がイベント日でないことが原因と考えられ、解禁直後に制度を採用した15社についてもイベント日を公表日に修正して分析を行ったところ、有意な異常収益率を確認することができた。 4.以上の内容に関しては1999年11月23日にメルボルンで開催されたアジア太平洋国際会計コンファレンスで研究報告し、ストック・オプションのような報酬制度の導入が日本企業の体質に及ぼす影響についてコメントを受けた。 5.今後は、平成11年度のデータを加えることによってサンプル数を増やし、データの信頼性をさらに高めるとともに、方式の違いによって市場の反応が異なるか否かについて分析する予定である。
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