1.ストック・オプション制度を制度創設と同時に採用した企業、1年後に採用した企業、現在まで採用していない企業、のROE、総資本当期利益率、総資本営業利益率を、業種を考慮して対比させたサンプルを用いながら、それぞれの平均値を比較した。サンプル数が各14社と非常に限られており、また、統計的に有意な差とは言えないが、平均値そのものは、制度創設と同時に動いた企業の業績のほうが、追随して採用した企業の業績よりも良かった。追随して採用した企業の業績は、現在まで採用していない企業の業績と比べても劣っていた。 2.平成13年商法改正によって創設された新株予約権制度では、付与できるストック・オプションの数と付与対象に関する規制が撤廃されたため、仮説の再検討を行った。費用計上を必要としない支払手段として付与されるストック・オプションの数が増加すると考えられるものの、税制上の優遇措置の適用範囲が限定されているため、極端な状況は生まれないことが明らかになった。また、国際財務報告基準の公開草案では、付与日の公正価値を基礎として報酬コストの費用計上を指示していることから、それが基準として公表された時点で、費用計上という歯止めがかかるようになるため、ストック・オプションの過剰付与を懸念する必要はなくなった。 3.研究成果を国内外の研究集会(国際会計研究学会第19回大会および2002Accounting Theory and Practice Conference)で発表し、科学研究費補助金研究成果報告書(冊子体)にまとめた。なお、研究成果の一部を「新株予約権の会計」と題する論文にまとめ、国際会計研究学会年報に投稿した。
|