日本企業の会計的選択行動を解明するには、内外のトップレベルの研究成果を検討し、リサーチ・デザインを確立しなければならない。このような考えから、会計的選択にかかわる1991-2000年における主要ジャーナルのデータを幅広く収集し、データベースに入力した。この「会計文献タイトル・データベース」には検索エンジンを装着して、Webサーバーを通じて、インターネット・コミュニティに一般公開している。 日本のビジネスには、メインバンク制、株式相互持合制、終身雇用制、系列取引、官庁の行政指導、産業誘導税制など、わが国特有のものが存在する。これらの日本的システムは、日本的な会計的選択に大きなインパクトを与えていると思われるので、本研究では、1980年代より継続的にメインのトピックにしている。本年においても、株式相互持合いなど、日本的な所有構造の分析を行った。 本研究における中核的な論点は日本的な取引慣行であるが、このトピックについては、フィールド調査を通じて、百貨店の消化仕入れ、既成服の返品制度、建設業の下請け割込みなどにどのような取引特性があり、どの点において裁量行動であるかが解明できた。日本企業の会計的選択には取引デザインがからんでいて、取引そのものが操作の対象になっている点が明らかにされた。 ビジネスの細胞をなすのは取引であるが、この取引はいまIT革命の波に洗われており、激しい変化のさなかにある。このeコマースと会計的選択行動の関連はなおも未解明の点が多いが、会計記録と会計報告の全体にわたり、根本的な革新をもたらすことに疑いはない。そこで、本研究では、eコマースについても、調査と研究を実施している。
|