本研究の目的は、市場志向に基づく商品開発の視点から、商品企画という顧客の感性に訴える領域で展開される原価企画活動において、どこにコストをかけて、どのように顧客の感性に働きかけるかという戦略的なコストマネジメントの役割を明確にすることにある。実際の企業における製品へのコストのかけ方と感性評価との関連、および顧客による製品の評価構造の認識と商品開発との関係を研究する。 本年度は、製品の生産者側が現実の製品開発において、どのように顧客のニーズを取り入れ、開発段階で具体的な機能や品質の項目に表現し、コスト見積との関係で商品の価値を評価しているかについて、主に資料収集を中心にして研究を行った。自動車産業の企業では、TQMの一環として、顧客が要求する形状デザインや技術項目について、どのような感性項目が重視されているかを計量的に分析している実務が確認された。また、電機産業の一部では、製品開発段階での徹底的なコスト低減が進み、顧客の感性項目に関わらない部分でコスト低減を図らなければならない状況にいたっていることが判明した。また、同一製品について、海外での顧客の感性評価に違いがあるかについて、次年度以降に実験調査する可能性について韓国の研究者と情報交換を行った。さらに、次年度に予定する感性評価構造の調査を効率的に実施するために、どのような製品が感性評価実験に適しているかについて、学生を被験者にして準備的なアンケート調査を実施した。 次年度は、本年度の研究をふまえて、具体的な製品を用いてさらに調査研究を継続して実施する予定である。
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