本研究の目的は、市場志向に基づく商品開発の視点から、商品企画という顧客の感性に訴える領域で展開される原価企画活動において、どこにコストをかけてどのように顧客の感性に働きかけるかという戦略的なコストマネジメントの役割を明確にすることにある。現実の製品開発における製品へのコストのかけ方と感性評価との関連、および顧客による製品の評価構造と製品開発の成功との関係を研究する。 本年度は、昨年度に実施した予備的なアンケート調査を踏まえて、「ファクシミリ」をサンプル製品に選定して、家電メーカーの協力のもとに、ヒアリングを重ねて調査内容を検討し、感性VEのフレームワークに基づく消費者の関心度調査および評価構造調査を実施した。4メーカー6機種をサンプルにして、消費者側の被験者として学生および主婦層を対象にするとともに、生産者側の被験者としてメーカーの開発メンバーを対象にして、同じ調査実験を約160名について実施した。調査では、開発者側の開発意図・訴求項目が消費者に伝わっているかを中心に、消費者の認識と開発者の認識のギャップの有無の検証、消費者の感性に関わる一般的嗜好(テイスト)とサンプル製品の選好との関係を調査した。また、感性VEの評価実験調査について、海外での顧客の感性評価に違いがあるかを韓国で調査するため、韓国の研究者と情報交換を行った。韓国ではファクシミリは家庭で普及していないため、まず、かつて実施したシャープペンシルをサンプルにした調査を実施することにした。 次年度は、本年度の調査の結果をさらに分析するとともに、分析結果を現実の製品開発に取り入れるプロセスを追ってその成果をまとめる予定である。
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