本研究の目的は、顧客志向の視点から、商品企画という顧客の感性に訴える領域で展開される原価企画活動において、どこにコストをかけてどのように顧客の感性に働きかけるかという戦略的なコストマネジメントの役割を明確にすることにある。現実の製品開発における製品へのコストのかけ方と感性評価との関連、および顧客による製品の評価構造と製品開発の成功との関係を研究した。 最終年度の本年度は、昨年度末から実施した感性コストマネジメントに関する一連の調査の結果を分析し、その結果を総合家電メーカーの事業部の協力のもとで新製品開発の実務に導入する試みを行った。調査では、対象製品として「ファクシミリ」を選定して、感性VEのフレームワークに基づく消費者の関心度調査および評価構造調査を実施し、一般消費者側と杜内開発者側のメンバーの調査結果を分析した。製品の操作性、色質感、形状・大きさ、経済性などの評価項目について1消費者は特に優れた評価項目のある商品を選好するのか、特に劣った項目がない商晶を選好するのかという評価構造特性を明らかにし、製晶開発の重点要素についての消費者と開発者との認識ギャップについて研究した。また、開発者側の開発意図・訴求項目が製品を通じて消費者に伝わっているかを中心に、現行製品へのコストのかけ方の成否と、次期新製晶への反映のさせ方について分析した。調査結果を踏まえ、協力メーカーの実際の新製品開発プロセスに関与して諸提案を行い、感性コストマネジメントの導入を行ったが、その成果は新製品の発売という形で表れることが予定される。実務への導入のプロセスで、現段階での感性コストマネジメントの手法が必ずしも満足のいくものではなく、継続して研究する必要性と今後の発展の方向性と課題が明らかになった点で有益であった。
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