本研究の目的は、企業価値と関連する情報を投資家に提供する点で、日本の会計制度が、長期にわたって、インフラとして有効に機能していたかを検証することである。Ohlsonモデルに従い、決算期末株価を一株当たり当期利益と株主資本主義簿価で線形回帰する。ここでは、企業価値の代理変数として株価を利用する。各変数は、規模の影響を取り除くために、前決算期末の株価でデーフレートした。 サンプルは、1999年末に、東京証券取引所、大阪証券取引所、名古屋証券取引所に上場している企業である。分析期間は1968年から1999年の32年間である。対象企業数は、1968年から1971年の最初の4年間はデータの関係で300社前後と少ないが、それ以降の年では995社から2046社にのぼる。決算期変更のあった年のデータは分析からはずされている。 過去30年間で、株価と会計数値は、自由度調整済決定係数でみれば、1%から15%という弱い関係にある。1970年代から1980年代にかけて、株価と会計数値の関連性は減少している。1990年代前半では、株価と会計数値の関連性は、1980年代よりは強まる。この理由の一つは、株主資本簿価の説明力が高まったことである。しかし、1990年代後半になると、その関連性が低下している。 次に、持分法が強制的に適用された1984年から1999年まで、連続ベースの利益と株式資本と株価の関係をみる。連結会計情報の有効性は、個別会計情報よりも若干上回るものの、平均して高いとはいえない。この理由の一つは、これまで、日本企業の多くが連結グループ経営というよりも親会社中心の経営であったからである。実際、連結企業グループの規模は親会社に比べれば、それほど大きくない。売上高でみれば、連結グループの範囲は、親会社のほぼ1.2倍である。この水準は、1984年から1999年にかけて、ほとんど変わっていない。
|