研究概要 |
本研究の目的は、連結会計制度が投資家に有用な情報を提供するという意味で有効に機能しているかどうかを検証することである。本研究では、第1に、企業のグループ戦略が株主価値に影響をもたらすことが検証されている。これは連結会計制度の前提の一つである。第2に、制度導入以降、長期的にみて、連結会計情報と企業価値(株価)の関連性は、個別会計情報とほぼ同程度であることが明らかにされた。連結会計制度は1977年4月以後開始する事業年度から導入された。制度化の背景は、日本企業の国際化と多角化の進展である。その後、連結経営重視の傾向が強まっているという前提で、2000年3月決算期以降、単独決算から連結決算主体に制度上の転換がなされた。1990年代に実施された日本企業(上場・店頭登録企業)どうしの企業結合・再編120件が株主に便益をもたらしたかについて、イベントスタディーの手法で調査した結果、平均すれば、買手企業とターゲット企業の株主は、アナウンスメント時に、それぞれ、統計的に有意な0.9%、4%程度のリターンを獲得している。これは企業結合・再編に関連する情報が企業価値と関連することを示唆している。さらに、1979年から2001年の期間で連結と個別の両方の財務諸表を公表している企業、653社(1979年)から2,322社(2001年)について、サイズ効果を調整して、株価を利益と株主資本で年ごとに回帰した結果、連結会計情報と個別会計情報は、クロスセクションの株価変動のうち、平均すれば、それぞれ、26.4%、27.6%を説明する。連結グループが親会社よりも大きい企業ほど、また、国際的な事業展開をしている企業ほど、会計情報と企業価値の関連性が低いことが明らかになった。
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