研究概要 |
本研究は、会計情報と市場の価格形成の関連性を長期的な関連性を実証的に検証し、会計が経済のインフラとして機能するための要件、および、市場を基礎とする会計研究の企業実務への適用を検討している。この研究の目的は、利益、配当や資本などの長期時系列データにもとづいて、個別財務諸表情報と連結財務諸表情報が,どの程度まで企業価値を説明していたかを統計的に検証し、20世紀後半の会計制度を再検討することである。本研究では、配当割引モデルとクリーンサープラス関係のもとで、会計変数の確率過程を特定し、会計情報にもとづく評価モデルを導出している。利益や株主資本簿価と株価(あるいは、株式リターン)の長期的な関連性は失われていないことが確認されている。個別、連結財務諸表情報と株式リターンの関連性は、自由度調整済決定係数でみると、おおよそ5%から20%とのレンジにある。無形固定資産や研究開発費の増大傾向などの要因をコントロールしてもなお、その関連性は低下していると推察できる。投資家は、また、営業キャッシュフローよりもむしろ発生主義会計にもとづく当期利益を重視する傾向にあることが発見された。さらに、業績評価と会計情報、企業グループ戦略としてのM&Aと会計情報の関連性が検証されている。 1990年代に実施された日本企業の企業結合・再編の便益について、イベントスタディーの手法で調査した。その結果、平均すれば、買手企業とターゲット企業の株主は、アナウンスメント時に、それぞれ、統計的に有意な0.9%、4%程度のリターンを獲得している。さらに、企業のグループ戦略に関する会計情報が企業価値と関連することを発見した。
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