平成11年度の基盤的研究を踏まえて、平成12年度には、書誌研究を継続して行うと同時に、成果の公表に努めた。まず、平成12年9月2日に西南学院大学において開催された日本経営分析学会2000年度秋季大会において、「資源生産性分析の視点-内部分析と外部分析の融合と乖離-」と題した研究報告を行い、環境管理情報の会計的表現に関して、財務会計的視点よりも管理会計的視点の整備が重要なことを指摘し、環境管理会計の類型化を試みた。あわせて、2編の論文を公表した。「環境管理と資源生産性分析」においては、環境管理会計の類型から展開し、資源生産性を余剰法によって分析することに関して、余剰法の環境事象への適用のための会計情報の特性について考察した。そこから、資源生産性分析を数量・価格分析の環境管理への応用と位置付けた。また、「環境トータル・コストの認識と測定の課題」においては、環境管理や資源生産性分析を会計的な視点から操作可能とするための概念を考察した。そして、従来から考察されている製品コスト概念に関して、製品ライフ・サイクルを出荷やアフター・サービスの範囲だけではなく、廃棄・除却に至る範囲にまで及んで把握することにより、会計情報に環境トータル・コストの概念が導入できる可能性を示唆した。同時に、製品開発・工業化段階における環境原価企画の構想にも言及した。さらに、アメリカ環境庁の調査を基礎として、会計的認識と社会的認識との間に存在する乖離を会計測定の視点から考察した。これらの研究を通じて、会計測定の視点からは、環境事象の事前認識に限界があることが明らかになったが、事後認識を十全に行うことにより、会計情報が社会的な資源生産性を高めるための一定の情報価値を有するようになることを提示した。
|