平成11年度には、書誌による基礎研究を行い、企業の環境活動と会計指標との関係について、日本社会関連会計学会第12回年次大会(平成11年11月20日)統一論題において、「会計文化と測定対象-社会関連指標と会計指標-」と題する成果報告を行った。 平成12年度には、平成11年度の基礎研究を踏まえて書誌研究を継続して行うと同時に、成果の公表に努めた。まず、日本経営分析学会2000年度秋季大会(平成12年9月2日)において、「資源生産性分析の視点-内部分析と外部分析の融合と乖離-」と題した研究報告を行い、環境管理情報に関して、財務会計的視点よりも管理会計的視点の整備が重要なことを指摘し、環境管理会計の類型化を試みた。あわせて、2編の論文を公表した。「環境管理と資源生産性分析」においては、環境管理会計の類型から展開し、資源生産性を余剰法によって分析するための会計情報の特性について考察した。そこから、資源生産性分析を数量・価格分析の環境管理への応用と位置付けた。また、「環境トータル・コストの認識と測定の課題」においては、環境管理や資源生産性分析を会計的な視点から操作可能とするための概念を考察した。そして、従来から考察されている製品コスト概念に関して、製品ライフ・サイクルを、廃棄・除却に至る範囲にまで及んで把握することにより、会計情報に環境トータル・コストの概念が導入できる可能性を示唆した。同時に、製品開発・工業化段階における環境原価企画の構想にも言及した。さらに、アメリカ環境庁の調査を基礎として、会計的認識と社会的認識との乖離を会計測定の視点から考察した。これらの研究を通じて、会計測定の視点からは、環境事象の事前認識に限界があることが明らかになったが、事後認識を十分に行うことにより、会計情報が社会的な資源生産性を高めるための一定の情報価値を有するようになることを提示した。
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