研究概要 |
昨年度の研究に引き続いて,正標数の孤立特異点の不変量の一つとしてのHilbert-Kunz重複度の研究を行った.その成果の一つとして,有理特異点の双対グラフから定まるイデアルの構造定理とそのイデアルに関するHilbert-Kunz重複度の計算方法を得た.また,一昨年の我々の研究成果に関連して,他の研究者が証明の簡素化などを試み,それに成功したとの連絡を得たため,そのアイデアを利用して,研究成果の改良を試みた(口頭発表のみ). 上記のHilbert-Kunz重複度の研究をブローアップ代数の研究に生かすために,ブローアップ代数のHilbert-Kunz重複度の計算を試みたが,残念ながら,完全なアルゴリズムを得ることはできなかった.部分的な成果として,ブローアップ代数のHilbert-Kunz重複度のベースになる局所環のHilbert-Kunz重複度と通常の重複度を用いた評価式を与えた.詳細な計算のアルゴリズムを与えることは次年度以降の研究課題とする予定である.さらに,この研究の途中で,正標数の場合のブローアップ代数の構造について,Cohen-Macaulay性などは良く知られているが,F有理性やF正則性などについては意外と知られていないことが判明した.これらの概念は正標数の特異点の研究においては極めて重要であるので,ブローアップ代数のF有理性やF正則性の研究の必要性を認識した.そのため,環論的な立場から,国内のブローアップの研究成果を調べ,Lipmanの研究をベースにしてブローアップ代数のF有理性についての研究をはじめた.また,新たに東北大学の原氏とも連絡を取り,幾何学的な立場からも研究を始めた.これらの研究については,詳しくは次年度以降の研究課題とする予定である. 以上の研究成果については,2000年6月の海外出張及びそれ以降の国内のシンポジウム等で成果発表及び研究打ち合わせを行った.
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