一般に、代数曲面に曲線族からなるファイバー構造が入ると、曲面の構造を詳しく記述できることが多い。エンリケス曲面は必ず楕円曲線からなるファイバー構造をもっている。 本年度は、より一般的に、任意種数gのファイバー構造をもつ代数曲面について、それに付随するヤコビアンファイバー曲面のモーデル-ヴェイユ群についての結果を得た。このモーデル-ヴェイユ群は、有限生成アーベル群であることが知られているが、その階数がどれだけ大きくなりうるかは知られていない。Neronは1954年に、階数の大きなモーデル-ヴェイユ群をもつ代数曲面の構成法を述べているが、これは長い間、厳密に証明が与えられていなかった。g=1の場合には1991年に初めて、ShiodaによりNeronの方法の正当性が検証された。我々は、g【greater than or equal】2の場合について考察し、Neronの構成法そのままでは彼の主張は完全には正しくないこと、しかし改良を加えることにより、g【greater than or equal】3の場合には、モーデル-ヴェイユ群の階数が3g+7以上の曲面が構成されることを示した。 また、アルゴリズムの開発は代数系の語の問題にも重要である。定められた有限個の語を部分語に含まない語からなる正規言語について、これから得られる最小オートマンを記述する行列式とメービウス関数の関係を調べた。これはメービウスの反転公式の非可換な一般化と考えられる。更に、有限な完備書換システムで与えられるモノイドから定義されるホモトピー加群の具体的な計算法を示した。
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