一般に、代数曲面に曲線族からなるファイバー構造が入ると、曲面の構造を詳しく記述できることが多い。エンリケス曲面は必ず楕円曲線からなるファイバー構造をもっている。そしてファイバー構造の性質を記述するには、まず一般ファイバー、次に特異ファイバー、重複ファイバーを求めることが考えられる。また、切断方向の構造はモーデル-ヴェイユ群で記述される。 1.任意種数gのファイバー構造をもつ代数曲面について、それに付随するヤコビアンファイバー曲面のモーデル-ヴェイユ群について研究を行った。Neronが1954年に示した構成法について、我々はg≧2の場合について考察し、Neronの主張は完全には正しくないこと、しかし改良を加えることにより、g≧3の場合には、モーデル-ヴェイユ群の階数が3g+7以上の曲面が構成されることを示した。 2.楕円ファイバー構造をもつ代数曲面で小平次元が1で正規5次曲面に双有理同値となるものについて研究を行い、特に重複ファイバーの個数と重複度を調べ、曲面の幾何種数が正のときには完全に決定し、それぞれについて例を構成した。 3.アルゴリズム論の観点からの代数系の研究については、有限個の生成元と定義関係で決まる代数系の構造や決定問題を、主として書換えシステムの手法で研究した。有限表示されたモノイドに付随するグラフのパスの間のホモトピー関係式について研究を行った。 (1)1個の関係によって定義されるモノイドは有限なホモトピー基底を持つことを証明した。 (2)モノイドの多くの代数的性質が、線形時間で解ける語の問題をもつような有限表示モノイドのクラスに対しても決定不能であることを示した。 (3)ホモトピー加群が有限生成でなくても、左右のホモロジーが有限になることもあることを示した。
|