研究概要 |
三次元ユークリッド空間R^3におけるすべての平均曲率一定な閉曲面は球であるだろうというホップに依る予想がある。その閉曲面の種数が0の場合には、この予想は正しいが、一般の場合には正しくないことが分った。1986年に、ウエンテに依って見つかった始めての反例は、種数1すなわちトーラスの場合だった。それは、ウエンテ・トーラスと呼ばれる様になった。その後、アブレシやウオルターに依ってさらなる研究が続けられた。一方、R^3における完備極小曲面の(モース)指数はよく研究されているけれど、極小でない平均曲率一定の閉曲面の指数はあまりよく知られていない。球以外に、よく分った指数をもつ平均曲率一定な閉曲面は、知られていなかった。そこで私達の共同研究者の一人は、極小でない平均曲率一定なよく分る指数をもつ閉曲面の存在を示した。それは、ウエント・トーラスを使って示された。すなわち,次の様な結果を得た。Nを任意の自然数とするとき,Nより小さい指数を持つウエント・トーラスが有限個存在することを示した。このウエント・トーラスは、極小でない平均曲率一定な閉曲面であるから、それが求めるものであることが分る。 また、上の問題とは別に、私達の共同研究者の一人は、モジュラー群のある部分群を研究した。それは、合同部分群ではなく,上半平面H^2におけるその群の基本領域を具体的に決定した。それから得られる閉リーマン面の種数やその基本領域の各辺のくっつきの一次変換なども具体的に決定した。この結果をもとにして、さらにくわしい閉曲面の性質や、その上の関数、特別な点、例えば、ワイエルストラス点などが分る様になると良いと思う。そして,モジュラ関数に依る具体的なロンスキャンの表示などが得られればと期待される。
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