研究概要 |
葉広和夫,志摩亜希子との共同研究で,正規化したアレキサンダー多項式をテイラー展開して得られる係数がVassiliev不変量になることを示した.このとき,2次元リボン結び目に対して2種類のVassiliev不変量を定義した,すなわち,2次元リボン結び目の3次元空間への射影の特異点集合を用いる方法と,リボン円板のリボン特異点集合を用いる方法である.上記の共同研究は,後者の方法による定義を採用した証明であった.今年度は,志摩との共同研究で,実は,この2種類の定義が一致することを証明した.2種類の2次元リボン結び目の定義,simply knotted sphereとリボン円板による方法,が一致することを矢島猛が示したが,この結果は,これの一般化である. さらに,2次元リボン結び目の結び目解消操作として,HC移動を定義した.これは,1次元の結び目のデルタ結び目解消操作の一般化として考えたものである.実際,位数2のVassiliev不変量である正規化したアレキサンダー多項式をテイラー展開して得られる2番目の係数について,コンウェイ多項式の2次の係数に関する岡田真枝の結果と非常によく似た結果を得た.証明は,昨年度示したように,この値が,1次元結び目のときのように回帰的に計算して得られることを使う.HC移動に対してHC結び目解消数が定義できるが,この結果を使うと,いくつかの結び目について,HC結び目解消数を決定することができる.また,HC結び目解消数と従来の1ハンドル結び目解消数との関係も得られた.
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