研究概要 |
カウフマンは結び目のコード図の研究から仮想結び目の研究をはじめた.仮想結び目の考えを利用して,佐藤進は2次元リボン結び目を仮想弧で表示できることを発見した.今年度においては,この仮想弧表示を使って,2次元リボン結び目の研究を進めた. 2次元リボン結び目の結び目解消操作として一昨年度定義した,HC移動が,実は,仮想結び目理論における『禁じ手(forbidden moves)』の一つに対応することに着目して,次のような結果を導いた. 1.すべての仮想結び目(特に古典的結び目)が『禁じ手』によりほどけることを射影図において組み合わせ的に証明した. 2.HC移動が,2次元リボン結び目の結び目解消操作であることを,仮想弧表示を使って証明した 3.2次元リボン結び目の正規化したアレキサンダー多項式の第2次導関数のt=1での値(α_2不変量とよぶ)は,位数2のVassiliev不変量であるが,これを仮想弧表示においても回帰的に計算して得られることを示した. 4.一昨年度において示したHC移動を2次元リボン結び目に施すことによりα_2不変量が2または0変化することを仮想弧表示において再証明した.すなわち,禁じ手を一回おこなうとこの値が2または0変化することを示した. 5.もともとHC移動は,1次元の結び目のデルタ結び目解消操作の一般化として考えたものであるが,上記4の結果を用いて,1次元結び目におけるデルタ移動とその結び目の2次元スパン結び目のHC移動の関係について考察した.
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