研究概要 |
平成11年度は研究課題に関連する問題の理論的研究に重点をおいた。具体的に研究目標としたのは次の2点である: 1)乱流等非線形拡散現象の確率的モデルを構築すること。特にブラウン粒子方程式型のSPDE(確率偏微分方程式)によるモデル化と数値解析への応用について調べること。 2)非因果的確立モデルの数値解析についての考察。特にFredholm型(非因果的)確率積分方程式の数値近似解についての理論的考察。 ・1)まずBurgers方程式を取り上げ、初期値問題の確率解が、準線形或いは半線形の2種類のBPE(プラウン粒子方程式)の解として構成できることを示した。特に半線形BPEモデルについては、解の存在・一意性の証明を偏微分方程式論に於ける結果を使用せずに、確率的手法で自己完結的に与えることに成功した。また、これとは別に反応拡散系方程式の初期値問題について上解と下解が、多次元値ブラウン運動に関するBPEの確立解を通して構成できることを示した。この結果は既にG.Rosen(Phys.Rev.Letters,1986)によって得られているが、その直感的議論をBPE論の枠組みで正当化することに成功したのである。 ・2)特に1次元バラメータのFredholm型(非因果的)確率積分方程式について、数値近似解構成の可能性と問題点について考察し、その結果は数理解析研究所の短期共同研究会「確率数値解析に於ける諸問題」にて発表した。 国際会議では3度講演し、そのうちIMACS'99(於Varna)では力学系理論の確率数値解析への応用に関する分科会を組織した。
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