研究概要 |
今年度行なった研究活動のうち,論文として取りまとめるに至ったものの内容は以下の通りである: i)代数的位相幾何学の基本概念・手法の「非可換化」とその量子場理論への応用, ii)超伝導におけるJosephson効果の一般的取扱い。 i)は,昨年7月から1ヶ月間スイスLausanne大学数学研究所Prof.S.Maumaryを訪問し,また学術振興会短期招へい計画により本年1月から2ヶ月間同教授を京都に招いて行った,研究の成果である。これは,一昨年より同教授と開始した量子場理論への代数的・圏論的手法の適用と代数的位相幾何学の基本諸概念の「非可換化」を目指す研究プロジェクトの一環として超対称性とhomotopyの深い結びつきを解明するもので,その内容を共著論文S.Maumary and I.Ojima,"Supersymmetry and Homotopy"としてちょうど完成し,現在投稿準備中である。 ii)は局所量子論でのマクロ変数と対称性の破れの一般的定式化に関する本プロジェクトの一環で,超伝導現象の本質的特徴を端的に表現するJosephson効果に関して,一般的妥当性の明確でない従来の導出法に代え,Josephson接合を隔てて接する2領域の異なる秩序変数の差それ自体がもたらす物理的効果としてのJosephson currentの本質を直截に表す簡明な導出法を提出した。これは論文I.Ojima,"Simple derivation of Josephson formulae in superconductivity"としてLett.Math.Phys.に掲載予定。関連テーマとして,局所量子論での局所温度状態の一般的定式化や,対称性自滅のある場合への超選択理論拡張の課題があり,前者はドイツGottingen大学のProfs.D.Buchholz,H.Roosと,また後者は本年度3ヶ月間京都へ招待したイタリアRoma大学のProf.J.E.Robertsとの研究を継続中である。
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