本研究の目的のひとつである、非可逆離散写像が非双曲型周期軌道を有している時意味のある基本測度を構成するという問題に関しては、平成11年11/27〜12/8、北海道大学の客員教授として札幌に滞在していたM.Denker氏から有効なアドバイスを受ける事ができ、nonsingularなcorformal measure存在の為の十分条件を確立する事ができた。方法論としては、先ず性質の良い集合上で定義されたinduced map に対するconformal measureを構成しそれを全体に広げるというものである。 また、もうひとつの目的、観測量の時間発展に関する時間相関関数の漸近的振舞いを明らかにするという問題に関しては、平成11年10/10〜10/20英国出張しMonchester大学教授M.Pallicott氏のレビューを受ける事により、Equilibrium stateの新しい密度関数の評価を取り入れ、LiveraniのPerron-Froberius operatorの摂動をとおしたアプローチを再び適用し、多項式のオーダーで時間相関関数の減少のオーダーを上から評価した。この結果は、平成10年度の研究課題「非線型・非双曲型力学系における統計的性質の研究」で達成された結果をより厳密化したものとなっている。
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