研究概要 |
1.R=(-∞,∞)におけるランダム媒質として原点の左側ではブラウン運動,右側では恒等的に0となるものを考え,その中を動く拡散過程X(t)の極限的振る舞いについての前年度の研究成果を受けつぎ発展させ,河津・鈴木・田中による共著論文としてもとめた.とくにX(t)の最小値に関する極限分布の明確な形を与えた. 2.媒質が多次元の場合,例えばランダム媒質として多次元timeのブラウン運動をとり,その中を動く拡散過程の長時間後の振る舞いに関する研究,とくに極限分布の存在証明を目標にした.目標は達成されなかったが,そのアプローチとして必要な多次元timeのブラウン運動X(x)そのものに関する研究を行い,次のような新しい結果を得た.(1)ある種の條件をみたすx-領域に対しては,そこでのX(x)の最小値,最大値の確率分布は滑らかな密度関数をもつ.(2)ほとんどすべての見本関数は次の性質をもつ.「相異なる2つの時点で同じ値の極小値(または極大値)をとることはない」.これらの結果は,多次元ブラウン媒質の場合,1次のときの類推において「谷(valley)」の考察を進めて行く際に役立つものと考えられる. 3.前年度の成果のひとつである「時間的κ一様なマルコフ過程に対しても拡張された意味での從属操作が可能である」に関連して,不連続型のマルコフ過程の乗法的汎関数のあるクラスについての研究を行い,具体的表示を得た.これは,ランダム媒質が時間と共に変化する場合の研究のための予備的考察(時間的非一様なマルコフ過程の種々の構成法の検討)としてなされたものである.
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