研究概要 |
可換Banach環Aの代数構造とAの極大イデアル空間の位相構造は深く関わりあっている.平方根をとる操作について閉じている可換C*環の極大イデアル空間の構造について,それが局所連結の場合に決定できた.その際,Chechコホモロジーと被覆次元の言葉により記述できた.また,極大イデアル空間が局所連結であると,平方根をとる操作に関して閉じている単位的可換Banach環は可換C*環だけである事が古くから知られていたので,我々の得た結果は単位的可換Banach環に対する結果として捉える事ができる.可換Banach環から別の可換Banach環への準同形写像は極大イデアル空間の間の連続写像を引き起こし,それによりほぼ合成作用素として表現できる.一方環準同形写像ではこのようになっているとは限らないが,ある条件を満たす場合は醇同形写像のばあいのように極大イデアル空間の間の連続写像とさらに複素数体上の環準同形写像を引き起こし,その両者により記述できる事が証明できた.この条件は比較的緩い条件であるので,たとえば上への環準同形写像やもう少し一般的に"局所的に"上への環準同形写像であれば,この条件を満たす事がわかる.複素数体上には線形ではない環準同形写像があること,一方無限次元のBanach環では環準同形写像が時として自動的に線形になることが古くから知られていた.我々の得た可換Banach環上の環準同形写像の表現定理を用いて,多様な環準同形写像が自動的に線形である事が証明できる.たとえば円板環上の環準同形写像において,その像が非定数関数を含むとき,その環準同形写像は線形であることがわかった.連続関数からなる関数空間や多元環にたいして,その作用関数全体からなる空間や多元環の構造を探る上で重要な道具立てが得られたと考えている.
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