研究課題/領域番号 |
11640168
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
洞 彰人 岡山大学, 環境理工学部, 助教授 (10212200)
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研究分担者 |
村井 浄信 岡山大学, 大学院・文化科学研究科, 助手 (00294447)
佐々木 徹 岡山大学, 環境理工学部, 講師 (20260664)
廣川 真男 岡山大学, 理学部, 助教授 (70282788)
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キーワード | 調和解析 / 確率モデル / スペクトル / 量子確率論 / 距離正則グラフ / ランダムウォーク / カットオフ現象 / スケーリング極限 |
研究概要 |
本年度は、グラフ等の上のラプラス作用素のスペクトルの構造について、具体的なモデルに即した研究を行った。以下では、ランダムウォークのカットオフ現象と、スペクトル分布のスケーリング極限に焦点を当てて、新たに得られた知見を述べる。 1. ある種のランダムウォークにおいては、平衡状態への収束の過程で、カットオフ現象と呼ばれる著しい臨界現象が起こることが確認されている。その本質的なメカニズムの解明には未だだいぶん道のりがあるが、ランダムウォークを駆動するラプラス作用素のスペクトル構造が大きな役割を果たすことがわかってきている。本研究では、高度な対称性を有する距離正則グラフに着目し、その上のランダムウォークのカットオフ現象において、ラプラス作用素のスペクトルが果たす役割を追究した。結果として、かなり広いクラスのモデルに対して、カットオフ現象を厳密に検証し、臨界時刻やゆらぎの時間スケールを導出する手立てを得た。 2.量子確率論や自由確率論においては、確率変数族の非可換性のため、古典的な確率論では見られない新しいタイプの極限定理が登場する。本研究では、このアイデアをグラフの隣接代数に持ち込むことにより、ラプラス作用素に対するいろいろなスケーリング極限の考察を行った。距離正則グラフ上にギッブス状態に相当するものを新たに導入し、無限体積かつ低温極限におけるラプラス作用素の(量子確率変数としての)挙動を調べた。結果として、具体的なモデルに対し、体積と温度のスケーリングに応じて、スペクトルの極限分布の1パラメータ変形族を得た。また、グラフ上のラプラス作用素のボゾンフォック空間における第2量子化に対しても、真空状態に関するモーメントの評価等の計算を行った。これらのスケーリング極限の研究は、フォック空間上の無限次元調和解析との密接な関連に発展してゆくと期待される。
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