今年度の研究成果は第一に、ベクトル場のホモロジー方程式などの退化型の方程式の可解性の判定条件としてのシンボルのRiemann-Hilbert分解可能性とdiophantine条件の関係を明らかにしたことである。この結果は簡単に言えばRiemann-Hibert分解が可能であれば連分数などの数論的な現象は現れないというものである。もっと一般的な結果は研究成果にあげた論文「Global solvability of Monge-Ampere type equations」のなかで示されている。これにより混合型の方程式を解く方法のひとつとしてRiemann-Hilbert分解の方法が有効であることがわかる。これが成立しない場合は数論的な現象があらわれるが、これについては現在研究を続行中である。 次に、ベクトル場の標準形あるいは写像の標準形ではこれよりも複雑な現象が現れる。このうち幾分簡単なベクトル場の同時標準形に関連した部分は結果を得て数理研考究録に発表済みである。また、アメリカでのSIAMのシンポジウムでもこれらの報告をした。これを発展させてもっとまとめるのが今年度の目標であり、これは現在実行中である。 第3にresonancesが存在する場合に標準形への変換が収束するための条件を研究することの基礎的な研究として、定数係数のベクトル場でresonanceが存在する時にその摂動のベクトル場あるいは擬微分作用素による摂動がresonant標準形に変換されるための十分条件あるいは必要条件およびその時の標準形の決定を研究中であり、現在発表に向けて整理中である。これは今年度中に論文として発表する予定である。
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