本年度の成果は2点である。第一点はベクトル場の標準形に表れる非線形フックス型方程式系およびMonge-Ampere方程式に対して、それらがresonanceをもつ場合にPoincare条件のもとで特異解の範疇で可解性を示したことである。ここでPoincare条件を仮定したが、すでに知られているようにresonanceがある場合にはたとえPoincare条件を仮定しても滑らかな関数の範疇では可解性は一般に成立しないことに注意する。この結果は常微分方程式のいわゆるフロベニウスの定理の偏微分方程式への拡張とみなせる。このような非線型方程式に有効な結果は今まで知られていなかった。この結果の応用として、たとえばHartmanの定理を複素領域での対数型特異解の性質から示すことができる。この研究の今後の課題としては、Poincare条件が成立しない場合の研究がある。この場合いわゆるsmall denominatorがおこるのでかなりの困難な状況が予想できる。また漸近解析を通してWKB的な大域的な解析を行うことは興味あるが、今回はこれには成果を得ることはできなかった。これも今後のテーマとしたい。この成果は2002年の8月に北京で行われた国際数学者会議で報告した。 第2点の成果は可換なベクトル場の系および写像の系に関して同時Diophantine条件とその系のgeneratorの満足するDiophantine条件の関係を明らかにしたことである。この結果よりわかる事実として可換なベクトル場の系の同時標準化においては同時標準化は系の中の適当なgeneratorの標準化として得られることがわかる。これに反して可換な写像の系ではそのような単純な構造は存在しない。これらの理由は今のところわからないが、今後の研究の課題であると思われる。
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