研究成果は主に次の1)と2)である。 1)非線形偏微分方程式系あるいは差分方程式系の可解性にはたすDiophantine条件の役割をベクトル場あるいは写像の標準形との関連から明らかにしたこと。詳しくは以下のとおりである。 a)可換な写像の同時標準形が同時Bruno条件下で示される。さらにこれらの結果はGevrey族でのcircle mapsの系に拡張できる。(Math. Z.に発表済) b)非線形多変数フックス型方程式の可解性を有限の滑らかさを持つ関数空間で示した。これはレゾナンスがある場合の標準形に関するGrobman-Hartmanの定理に応用できる。(投稿中) c)定数係数のベクトル場の系でレゾナンスが存在する場合にその0階の擬微分作用素による摂動が大域的に標準形に変換されるための十分条件あるいは必要条件をDiophantine条件を用いて記述した。(Proc. Edinburgh Math. Soc.に発表済) d)可換なベクトル場の系および写像の系の同時Diophantine条件とその系のgeneratorの満足するDiophantine条件の関係を明らかにした。(投稿中) 2)Diophantine現象が可解性を示す際に、必要かどうかの判定条件としてRiemann-Hilbertの方法が有効であることを示した。詳しくは以下のとおりである。 a)多変数フックス型方程式の可解性の十分条件としてRiemann-Hilbert分解可能性を示した。特にR-H分解可能であればDiophantine現象はあらわれないことがわかる。これは混合型の方程式の可解性に応用できる。(Comm. PDEに発表済) b)ベクトル場の標準形に現れる非線形フックス型方程式系およびMonge-Ampere方程式がレゾナンスをもつ時に、ポアンカレ条件のもとで特異解の存在を示した。これはフロベニウスの定理の偏微分方程式への拡張とみなせる。これらの結果の一部は北京での国際数学者会議で報告した。 この様な特異解は多くの問題において有用であると予想される。これは今後のテーマである。
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