研究概要 |
単位円板内で定義された解析関数f(z)=z+a_2z^2+a_3z^3+…の単葉性質・星型性質・凸型性質などを中心に、解析関数や有理型関数の様々な性質を微分作用素・積分作用素・合成積・サブオーディネーション・微分方程式などの概念を用いて研究した。 一般に星型関数や凸型関数f(z)の部分和f_n(z)=z+a_2z^2+a_3z^3+…+a_nz^nは星型性質・凸型性質を保存しない。論文『Partial sums of certain analytic functions, International Journal of Mathematics and Mathematical Sciences, Internat.J.Math.Math.Sci.Vol.25,No.12(20O1),771-775』では星型関数の極値関数f(z)=z/(1-z)^2=z+2z^2+3z^3+…や凸型関数の極値関数f(z)=z/(1-z)=z+z^2+z^3+…の部分和f_3(z)=z+2z^2+3z^3およびf_3(z)=z+z^2+z^3の星型半径・凸型半径を求めることができた。最近になって、部分和の研究に対する新たな研究の方向を発見し、特別な関数の部分和ではなく、一般的な解析関数の部分和を論じる可能性が出てきた。このことによって、部分和の研究に対して、fn(z)=z+a_2z^2+a_3z^3+…+a_nz^nという形の一般的な解析関数の部分和の性質を研究するための大きなきっかけが得られた。さらには、これらの部分和の研究を1変数の解析関数のみならず、多変数の解析関数の部分和の問題へと拡張しつつある。したがって、解析関数の部分和に対する今後の課題は、上述の部分和に対する新しい議論によって、解析関数の部分和についての一般的な性質を考察すること、および、多変数の解析関数の部分和の研究へと拡張することにある 上記以外の研究から、J.E.Littlewoodによる論文『On inequalities in the theory of functions, Proc.London Math.Soc.Vol.23(1925),481-519』の中の結果が、解析関数の部分和に関係づけられることが分かり、解析関数の微分作用素や積分作用素と部分和に関する研究についても、新たな展開が可能になってきた。そして、これらの諸問題は解析関数の実数階微積分作用素に対しても応用出来る。したがって、関数の部分和に関するこの問題も、この種の問題に対する今後の研究課題であり、さらに研究を続ける予定である。
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