研究概要 |
研究代表者を中心に,学内における8名の研究分担者が課題名の研究を行い,以下に述べる研究成果(学術論文6編)を得た. 1.村上は,時間遅れをもつ方程式の典型例である関数差分方程式に対し,元の系と摂動系との漸近同値性を論じ,特性方程式の解の分布との関連で,これら2つの系が漸近同値であるための十分条件を与えた.また,時間遅れをもつ方程式を包括する準プロセスを扱い,skew product flowを構成することにより安定性を調べた.さらに,バナッハ空間における微分方程式に対し,ある関数空間の許容性を論じ,関数微分方程式や発展方程式の解のスペクトル解析に応用した.具体的には,微分方程式と関数空間から自然に定まる2つの作用素を考え,可換バナッハ環の理論を応用することによりこれら2つの作用素の和のスペクトルを解析した.許容性を作用素の可逆性に帰着させることにより,具体的な関数微分方程式や発展方程式が許容的であるための条件を得ることに成功した. 2.濱谷は,伝染病(エイズ)の伝播を拡散反応型の微分方程式で表し,その解の大域的性質を調べた.さらに昆虫のカップルモデルを扱い,Liapunov関数と最大値原理を適用することにより解の大域的挙動を解析した. 3.吉田は,二つの環R[α]とR[1/α]との共通部分R[α]∩R[1/α]がR[α]の中で整閉包となるための判定法を与えた.
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