1.筆者が昨年に得た準アーベル多様体の周期行列を使って準アーベル多様体上のテータバンドルのメトリックとその曲率形式を計算した。この成果を第7回国際複素解析会議(平成11年8月12日〜16日、福岡)と第2回ISAAC国際会議(平成11年8月16日〜21日、福岡工業大学)で発表した。このとき富山大学の阿部幸隆氏との議論で周期行列の新たな応用の見通しを得た。 2.筆者による準アーベル多様体の周期行列を使って、準アーベル多様体がアーベル多様体上の被覆多様体となることを示した。この成果を第2回日韓合同ワークショップ(平成11年10月12〜13日、広島大学)で発表した。 3.準アーベル多様体上に一般化されたテータ関数の満たす差分方程式の解を数値的に分析するための数値解析のアルゴリズムを研究した。この研究の一端を信州大学理学部数理・自然情報学科における集中講義と談話会(平成11年11月29日〜12月3日)で紹介した。真次教授との議論によって、複素解析における補間問題の研究が上記の差分方程式に応用できる見通しを得た。この研究に設備費で購入したコンピュータを活用している。 4.階数qの複素n次元準アーベル多様体が複素q次元アーベル多様体上の主バンドルとなることを示した。1における阿部幸隆氏との議論がこの結果を得る一つの契機となった。この証明の概略を2つの結果と合わせて、九州産業大学工学部研究報告第36号(平成11年)に発表した。準アーベル多様体の周期行列を応用して得られたアーベル多様体との関係式は整理して別の論文として発表する予定である。
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