研究概要 |
研究代表者の西原 賢はEとFが複素局所凸空間で、EがFの閉部分空間であるとき、どのような場合にE上の整関数fがF上の整関数に拡張されるかという問題について研究し、多項式の位相テンソル積表現を使って整関数fが積分型多項式であるとき、fはF上の積分型多項式に拡張されることを示した。これはCarando and Zalduendo(Proc.Amer.Math.Soc.,1999)の結果の拡張と別証を与えている。この結果を使って、Eが核型空間でE上の整関数fが一様有界型であるとき、fはF上の整関数に拡張されることを示した。これはMeise and Vogt(Proc.Amer.Math.Soc.,1984)の結果の拡張である。現在、この結果を核型空間以外の局所凸空間に拡張することを目指している。 研究分担者の糸川 銚は名古屋大学の小林亮一氏と共同で、リッチ曲率が正の完備非コンパクト多様体のn-1次元ホモロジー群は自明であるという有名な予想に取り組み、多くの重要な場合に対して、この予想が成立することを示した。更に、リッチ曲率が非負のときのn-1ホモロジー群の分類まで成功した。 研究分担者西畑 伸也東京工業大学情報理工学部助教授は、この期間において主に双曲・楕円混合方程式と離散型方程式について研究した。前者では熱輻射を考慮した気体の運動方程式を一般化したものである。その簡単なモデル方程式に対して進行波解の一意的存在及び安定性を示した。さらに双曲型部分の影響により、ある条件化で古典解が存在しないことを示し、弱解の考察を行った。ここでは、エントロピー条件を課すことで弱解の時間大域的存在及び漸近状態を得た。一般の双曲・楕円混合方程式に対しては初期値がソボレフ空間に含まれ、十分に小さいとき時間大域解の存在を示し漸近状態を得た。さらに時間大域的に解が拡散波に漸近することを示した。後者ではボルツマン方程式を研究し、1次元半空間上での定常解の存在及び安定性を証明した。ここでは境界条件として純拡散型と反射型を採用し、その各々に対して前記の結果を得ている。
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