研究概要 |
今年度は,研究課題である「非有界領域における退化型準線形楕円型方程式」の特徴を更に明確化するため,1年目の昨年度に引き続き,有界領域に対する問題のまとめ及び更に詳しい研究を行うと共に,本主題である非有界領域における問題へと研究を進めた。 昨年度得られた,有界領域に対する高階の固有値における,自明解および無限大からの分岐については,予定通り7月にイタリアで開催された第3回WCNA(非線形解析学者国際会議)で発表を行い,この分野の専門家とも情報交換を行った。 その結果,分岐理論が適用できなかった漸近挙動を持つ準線形方程式に対しても正値解について解析できる可能性を見いだし,研究を深めるとともに,新たな結果を得ることができた。すなわち,主要部と外力項の原点及び無限大における漸近挙動がある条件を満たすならば,正値多重解の存在する範囲と正値解の存在しない範囲を特定することができた。この結果は,主要部がラプラシアンである場合にAmbrosetti,BrezisおよびCeramiが得た結果の一般準線形楕円型方程式への拡張となっている。現在この結果のとりまとめは原稿の段階であり,来年度適当な雑誌に発表の予定である。 今年度はいよいよ本研究の最後の年として,昨年度得られた分岐理論による正値解および非自明解の解析,正値多重解の存在および正値解の非存在について,非有界領域への結果へと結びつける予定である。この2年間の研究により非有界領域故の問題点と,その解決手段も整ってきており,本年度十分に,最初の予定以上の成果を上げ,纏め上げることができる見通しをたてることができた。 なお,現在取り扱っている方程式の応用として,遺伝子構造の解析にモデル方程式として利用できないか、可能性を探っているところである。
|