研究概要 |
今年度は本研究課題の最終年度として,過去2年間においてまとめ上げられた有界領域に対する結果を整理するとともに,本主題である「非有界領域における退化型準線形楕円型方程式」に対する拡張へと研究を進めた。またこの研究を進めるに当たり,単に解析的手法だけでは十分な解析が困難であり,特に位相幾何学的立場からの研究の必要性が明らかになった。このため,特にこの分野の専門家である松岡隆を研究分担者として加え,その立場から本研究に参加することとした。 まず,過去2年間の研究にひきつづき,さらに新たな結果を加えることにより,2年間の結果の整理と併せて,以下の内容を含む2つの論文としてまとめ上げることができた。まず,第一の論文においては,主要部および外力項の漸近挙動が一致する増大度を持つ退化型準線形楕円型方程式について,解のアプリオリ評価が成り立つことを示し,さらにLeray-Schauderの写像度,Rabinowitzの大域分岐理論を一般化することにより正値解の分岐構造を解析した。続いて第2の論文では,それらの結果を使うことにより,主要部と外力項の漸近挙動が異なる方程式に対して,その正値解の多重性,非存在性,最小解の存在等の議論を行った。ここでは,第1の論文で扱った方程式との比較により解析が進められ,とくに正値解の分岐構造が重要な役割を果たした。また,Guedda-Veronのp-ラプラシアンに対する比較定理をこの退化型方程式に拡張することにより,Brezis-Nirenbergの示した"H^1 versus C^1 local minimizers"を一般の退化型準線形楕円型方程式に拡張した。これらの結果を使うことにより正値多重解の存在等の結果を得ることができた。この2つの論文は,現在雑誌に投稿中である。 以上述べた結果はすべて領域が有界である場合ではあるが,非有界領域においても外力項が適当な条件を満たすなら,Hardyの不等式を使うことにより同様の結果が成り立つことが証明される。非有界領域に対する結果は現在とりまとめ中である。
|