本研究は「リーマン多様体上のどのような滑らかな関数が、初めに与えられた計量の共形計量のスカラー曲率として実現され得るか?」と言う問題を定式化した、いわゆるスカラー曲率の方程式についての、完備リーマン多様体の場合への取り組みである。 この研究目的に沿い、平成11年度より14年度に渡って、完備リーマン多様体の幾何的構造の研究と言うより広い立場で問題を捉えて行くために、スカラー曲率の方程式において見られる諸現象と多くの共通点を持つ他の変分問題の最新の研究について、情報交換を目的とする研究交流を行った。具体的には、調和写像、リーマン多様体の崩壊に関わるスベクトル幾何、グラフ理論、弾性曲線の運動等における話題について、最新の状況を踏まえた比較検討を行った。平成12年度は、これまでに得られている諸結果について以前日本語でまとめ「数学」に発表した解説記事に最新の情報を盛り込みながら、今回は英文でまとめた。また、12年度より14年度に渡って、これら変分問題に共通して解の存在証明或いは構成において強力と考えられ、近年特に研究の盛んな連結和による接合法の過程を逆に見た、いわば曲率の集中に伴う分離現象(これを一つのバブルと見ることも可能である)について、特に2次元(極小曲面)の場合をモデルとして分祈する研究を行い、各特異点における重みを各特異点の対におけるある種の関係を表す不変量に分解し、その大きさを計ることにより、対象の分離に向かう程度を評価することが可能であるとの結果を得、その内容を和文並びに英文の論文にまとめた。
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