平成12年度における研究で、著者らは外部領域における波動方程式の解の非減衰と局所エネルギー減衰に関していくつかの重要な知見を得たことを報告する。 有界領域における非線型摩擦項を持つ波動方程式の解の挙動に関してはこれまで様々な研究がなされている。また、非線型項を有する全空間の問題については、約20年前から解の時間大域解の存在や有限時間の解の爆発問題など多くの研究がなされている。全空間では解の表示が昔から知られており、非線型項があっても方程式を積分方程式に直すことにより解表示の性質がうまく利用できる点で、この種の問題はある程度扱いやすいと著者は考えている。しかし、外部領域では波動方程式の解の具体的な表示が得られておらず全空間の問題と比べればかなり難しいと著者は考えている。今年度の研究で著者は、非線型摩擦項を有する外部領域における波動方程式の時間大域的古典解の存在を、重み付きエネルギー法を用いて導きさらに解のエネルギーが一般には減衰しないことも証明した。これらの議論で本質的な点は、摩擦項を方程式の摂動項とみなして議論しているところにある。特に、領域が全空間の場合、局所エネルギーが減衰することも解明された。その減衰の速さは、摩擦項にある係数の減衰の速さによって決定されている。この議論は、領域が全空間であるがゆえの解の具体的表示を用いてなされており、領域が一般の外部領域の場合は未だに解明されていない。これらの結果は現在論文としてまとめており、いくつかの全国の大学のセミナーでも講演した。
|