研究概要 |
研究調書の研究目的の欄で述べられた諸問題及び新たに提起された諸問題について以下の研究結果を得た。 (1)摩擦が領域全体で効く場合、解のエネルギー減衰評価及び解のL^2減衰減衰を、著者と池畠良氏(広島大)との共同研究を通じて導出した。全空間でのCauchy問題に関して、Kawashima-Nakao-Ono(J.Math.Soc.Japan,1995)の結果がある。彼らはL^p-L^q評価と通常のエネルギー法を組み合わせて議論していたが、我々はL^2frameworkで議論した。その際、L^2評価を導出するにあたりMorawetzの方法を改良したところに工夫がある。さらに、我々の結果は、W.Dan and Y.Shibata(Funkcial.Ekvac.1995)のlocal energy decayに関する結果を少し改良したものにもなっていることを特筆したい。また、この方法をR^3における圧縮性Navier-Stokes方程式のCauchy問題へ応用し、密度のL^2減衰評価も小林氏(九州工大)と池畠氏との共同研究により得られている。 (2)摩擦を境界の近傍で効かせた場合、ある特殊な初期値を選べば、エネルギーが一般に減衰しないことを明らかにした。直観的に言えば、摩擦を領域の境界が入り組んでいるところに効かせれば、そこで波は減衰し、その他で波は逃げていくことを記述している。証明するにあたり、局所エネルギーの時間可積分性をK.Mochizukiによる重み付きエネルギー法を用いて導出し、この評価を利用してエネルギーの非減衰性を議論している。さらに、M.Nakao(J.D.E.1998)で明らかにされた局所エネルギーの減衰率を改良したことも意義のあることと思われる。 (3)非線型摩擦項を有する外部領域における波動方程式の時間大域的古典解の存在を、重み付きエネルギー法を用いて導き、さらに解のエネルギーが一般には減衰しないことも証明した。これらの議論で本質的な点は、摩擦項を方程式の摂動項とみなして議論しているところにある。特に、領域が全空間の場合、局所エネルギーが減衰することも解明された。その減衰の速さは、摩擦項にある係数の減衰の速さによって決定されている。この議論は、領域が全空間であるがゆえの解の具体的表示を用いてなされており、領域が一般の外部領域の場合は未だに解明されていない。これらの結果は現在論文としてまとめており、いくつかの大学のセミナーでも講演した。
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