研究概要 |
変分的手法により非線型微分方程式の解の存在問題の研究を行った.本年度得られた成果は非線型楕円型方程式に関するものとハミルトン系に関するものに大別される. 1.非線型楕円型方程式に関しては研究代表者はR^N上のスカラーフィールド方程式の正値解の存在を方程式が空間変数xの依存性をもつときに研究し,その多重度を示すのに成功した.特に方程式のxへの依存性がいかに小さくとも,その解空間への影響は非常に大きいことを示した.また共同研究者大谷は有界領域上で境界に特異性をもつ非線型楕円型方程式を考察し,その成果をR^N上のスカラーフィールド方程式の解の存在問題へ応用した.倉田はゲージ理論にあらわれる変分問題の解の構成,非線型Schrodinger方程式の局在解の構成,固有値問題の最適化問題の研究を行った.中島は空間非一様性をもつ特異摂動問題をsuper solution,subsolution法を用いて解析した. 2.ハミルトン系に関しては,主に研究代表者が研究を行った.非常に複雑な(カオティクな)解軌道の変分的構成を目指し,Chile大学のFelmer氏との共同研究を進めた.空間次元が2以上であり,強い特異性をもつ特異点が3個以上ある場合にその構成に成功している.空間次元が3以上の場合は来年度の課題としたい. 研究者の連絡の場として都立大学での変分問題セミナーを2,3週間に一度の割合で開催し,情報,問題意識等の交感を行いつつ研究を進めている.来年度は特異摂動問題に対する変分的アプローチにも重点を置きたい.
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