研究概要 |
実3次多項式写像族P_<A,B>(z)=z^3-3Az+√<B>の力学系を考える。そのJulia集合が連結になるようなパラメータ(A,B)∈R^2の集合(connectedness locus)C_3の構造を解明することが目的であった。本年度の成果として、特に第1象限内のparabolic arcの上方にあるstretching raysに対して、その上の不変量であるBottcher vectorが無理数ならばstretching rayはparabolic arc上のどの点にもlandしない、つまり、stretching raysはsin(1/x)のグラフのように振動し、その集積点集合は非自明な弧になるという驚くべき事実が証明されたことが挙げられる。3次多項式族のconnectedness locusがいかに複雑かを予期させる結果でもある。この結果を、外国旅費を使って渡米しJohn Milnor教授に話したところ、非常に興味をもって下さり、彼のホームページにその解説を掲載して頂いた。(http://www.math.sunysb.edu/^〜jack/を参照のこと。そこには彼が作ったプログラムによるstretching raysが振動する様子が描かれている。)Bottcher vectorが整数のときはlandすることも示されるので、有理数の場合が残ったことになる。この場合はlandしないと予想しているが、まだ証明はされていない。ただし、これは3次だからであって、4次の場合には有理数であってもlandすることがある。その例として、実biquadratic mapsの族P_<a,b>(z)=(z^2+a)^2+bがMilnor教授によって示唆された。この族の力学系の研究も今後の課題である。更に、stretching raysの集積点集合の特徴付け、stretching raysのparametrizationと集積点集合との関係等、新たな問題も提起された。総じて、科研費が非常に有効に使え、研究が進展した1年であった。
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