研究概要 |
本研究の目標である,実3次多項式写像族のstretching raysの着地性に関しては,"Boettcher vectorが整数でないraysは着地しない"という最終結論に到達した。今年度は,その成果を発表することに力を注いだ。 まず,8月の北京での国際数学者会議と,京都での力学系のサテライトコンファランスにおいて,この結果を発表した。北京で再会したKevin Pilgrimは現在qc-deformationによって得られる,パラメータ空間のraysである,spinning raysやpinching raysの着地性について研究していて,彼とは有意義な討論ができた。Stretching raysもstretchingというqc-deformationによって得られるraysであるが,我々が力学系サイドからのアプローチであるのに対し,彼はタイヒミュラー空間からのアプローチをしていて,問題意識の違いがとても興味深く,得るものが多かった。今年の1月には静岡大学の奥山氏の尽力により彼を日本に招待することができた。京都で彼の仕事を集中的に聴くことができ,再び有益な議論もできた。 その間,証明の中の不備な箇所をいくつか手直しして,2月に雑誌"Communications in Mathematical Physics"に投稿した。現在審査中である。 また,実3次多項式族のhyperbolic componentsの構造についても解明した,D.Schleicherとの共同研究である論文,"Multicorns and Unicorns I : Antiholomorphic Dynamics, Hyperbolic components and Real Cubic Polynomials"が,雑誌Intemational Journal of Bifurcations and Chaosに掲載されることになった。その続編も現在執筆中である。
|