研究概要 |
熱弾性体モデルにおけるMaxwell状態の安定性 等温モデル:等エントロピーモデルのMaxwell状態(等面積原理をみたす比体積)においては,境界の両側のエントロピーは等しい.このようなMaxwell状態を摂動した初期値について,相境界の許容条件としてAbeyaratne-Knowlesの駆動条件を採用すると,許容条件を満たす大域的弱解が存在し,漸近安定となることを証明した.比体積と速度については,等エントロピーモデルと同じ挙動で,終局的にMaxwell状態に漸近する.エントロピー密度は単調に増大して,終局的な分布に近づく.この分布は,初期分布とGibbs関数のStieltjes積分で表される.さらに,これらの収束のオーダーを得ることができた.また,駆動関数をGibbs関数で表すことにより,駆動条件の物理学的な意味も明らかとなった.なお,この方法と表現式は,等温理想気体モデルのNishida大域解についても成立する. 多向性モデル:この場合Maxwell状態を,定常的な相境界で境界の両側でエントロピーが等しいものと定義する.応力関数が適当な条件をみたすとき,ある温度分布の近傍においては,任意の温度分布に対して一意的なMaxwell状態が存在することを示した.ひとつのMaxwell状態を固定して,その近傍においてRiemann問題を考えると,ある場合には解の一意性が成立しないことが分かった.したがって,等温モデルと異なり,Maxwell状態の安定性は(従来の形では)期待できない.許容条件を強くすると,安定となることが期待されるが,現在のところはこのような条件は得られていない;弾性体の内部構造(熱伝導・粘性等)の考察が必要であろう.
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