今年度は、主として、すばる望遠鏡及び近赤外線カメラ CISCO を用いた遠方銀河・銀河団の観測を行った。本科研費により購入した計算機を用いて、効率よく、観測データの整約及び解析を行うことができた。赤方偏移 1.2 の電波銀河 3C324 領域の近赤外線撮像観測を行い、これと可視波長域でのハッブル望遠鏡アーカイブ・データとを併せて解析することにより、電波銀河 3C324 の AGN 母銀河についての詳細な研究、及びこれに付随する銀河団中の銀河の近赤外光度分布及び色-等級系列の振る舞いについての研究を行った。電波銀河に関しては、これまでの可視光では整列効果による成分が卓越して電波銀河母銀河本体の観測は困難だったのに対して、今回の観測により、母銀河は、主に古い星の種族から成る、対称な形を持つ楕円銀河であることが明らかになった。これに伴い、銀河の内部構造について様々な新知見が得られた。銀河団に関しては、その光度分布から、比較的明るい銀河団銀河のアッセンブリの時期は、赤方偏移 1.2 よりも十分昔であったこと、しかし、明るい銀河と暗い銀河の間には、星の種族の年齢、空間分布などに系統的な大きな違いが見られた。これらは、本研究課題において、このような高赤方偏移の銀河を対称にし、すばる望遠鏡による十分深い観測を行ってはじめて得られた知見である
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