今年度は、昨年度より観測を行って得られている高赤方偏移の原始銀河団候補領域の解析を進めるとともに、新たなデータの取得、解析も行った。まず、遠方銀河団3C324領域については、すばる望遠鏡初期成果として昨年度末に3本の論文を出版した。さらに、今年度では、新たに得られた可視光のデータをあわせて、銀河の色分布をより詳細に解析し、photometric-redshiftのテクニックによって得られたサンプルを用いて銀河の空間分布、光度分布を調べた。重要な結果として、(1)様々な星形成過程の存在を示唆する銀河団中の銀河の大きく広がった色分布、及び(2)Biasされた銀河形成を示唆する光度分化、というふたつの重要な結果を得ることができた。次に、遠方超銀河団候補領域B21336+28領域の銀河クラスタリングの解析を行い、論文を出版した。この領域は、平成13年3月末にすばる望遠鏡により観測される予定となっている。さらに、原始銀河団候補領域53W002フィールドについて、銀河の光度、色分布の解析を行い、(1)輝線銀河は近赤外線で暗く、低質量の星形成銀河であること(2)この領域には、赤方偏移2.4に相当する発達した銀河に相当する色、光度を持つものがほとんど見られないこと、などの結果を得た。現在、出版準備中である。 さらに、すばる望遠鏡を用いたいくつかの新しい領域の観測的研究を行っており、X線深撮像とタイアップした広視野銀河サンプルの構築、赤方偏移1.27のLynx超銀河団の観測、赤方偏移1近くの銀河団の質量分布の研究などに着手し、データの取得、解析を行った。成果は順次発表の予定である。
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