本研究により、非常に実りある多くの科学的成果を得ることができた。 とくに、赤方偏移1を越える高赤方偏移銀河団については、すばる望遠鏡試験観測(11年4月、5月)及び共同利用観測(13年1月、3月)により近赤外線での深撮像、及び、可視広域撮像を行うことをできた。これに加え、アパッチポイント天文台3.5m望遠鏡やこれまでフランス・カナダ・ハワイ望遠鏡などで取得したデータをあわせて、形成期と思われる銀河団、及びそれらの領域における銀河の測光学的性質、クラスタリングの性質を明らかにすることができた。とくに、遠方銀河団3C324領域については、電波銀河本体の研究とあわせ、すばる望遠鏡初期成果として11年度末に3本の論文を出版した。さらに、12年度では、新たに得られた可視光のデータをあわせて、銀河の色分布をより詳細に解析し、photometric-redshiftのテクニックによって得られたサンプルを用いて銀河の空間分布、光度分布を調べた。重要な結果として、(1)様々な星形成過程の存在を示唆する銀河団中の銀河の大きく広がった色分布、及び(2)Biasされた銀河形成を示唆する光度分化、というふたつの重要な結果を得ることができた。また、遠方超銀河団候補領域B2 1336+28領域の銀河クラスタリングの解析を行い、論文を出版した。さらには、原始銀河団候補領域53W002フィールドについて、銀河の光度、色分布の解析を行い、(1)輝線銀河は近赤外線で暗く、低質量の星形成銀河であること(2)この領域には、赤方偏移2.4に相当する発達した銀河に相当する色、光度を持つものがほとんど見られないこと、などの結果を得た。もう一つの課題であったクェーサー母銀河の研究についてもいくつかの成果を得ている。上記3C324母銀河の研究の他、(1)Z=3.27 2型クェーサーの性質を明らかにした論文を出版、(2)あすか衛星により検出されたX線源のフォローアップ観測、などを進めるとともに、(3)すばる望遠鏡を用いたXMM-Newton X線衛星との共同深探査に参加し、広域深撮像データを取得、解析を進めた。
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