研究概要 |
3次元空間内での電離光子の輻射輸送を解くスキームを開発し,高赤方偏移宇宙において宇宙が再電離されていく様子をシミュレーションした。この計算よって得られた電離構造から,吸収線のVoigtプロファイルを仮定し,Lyα吸収線,並びにHα吸収線を生成した。Lyα吸収線系を,観測されているContinuum depressionと比較することにより,宇宙再電離の時期がz=6〜10であることを明らかにした。また,準解析的手法による密度場生成によって吸収線スペクトルを作り出し,その統計的性質を観測と比較することによって宇宙モデルに対する制限を与えるための手法を確立した。シミュレートされた吸収線系から,プロファイルを考慮した粗視化と特異速度場の補正を施すことにより,密度場の復元を行った。この1次元密度場をフーリエ変換することにより,3次元密度揺らぎのパワースペクトルを決定した。このパワースペクトルを仮定された宇宙モデルから予言されるパワースペクトルと比較することにより,宇宙背景放射では決定できないような,およそ1Mpcまでの小スケールまで密度揺らぎの決定を行うことができることが明らかになった。また,波長分解能数万の高分散分光観測のデータに対し,この手法を適用することで,宇宙モデルに対する制限を与えることができた。
|