研究概要 |
Ia型超新星への進化経路をさぐる上で、質量降着白色矮星がどのようにその質量を増加させて行き、最後にチャンドラセカール限界質量まで達するのかを調べることは、非常に重要なことであるが、まだ完全には理解されていない。計画初年度の平成11年度は、まず、(1)質量降着白色矮星上で起こるヘリウム・シェル・フラッシュ時にどの程度の質量が白色矮星表面から逃げて行くのかを理論的に見積もった。また、この結果を応用して、(2)白色矮星とそれより重い主系列星からなる系の進化を追いかけて、実際にIa型超新星になることを示すことができた。(Hachisu,Kato,Nomoto,and Umeda 1999)また、(3)白色矮星+赤色巨星の系の進化経路にも応用し、実際に観測を十分説明する数のIa型超新星が生まれることを明らかにすることができた。(Hachisu,Kato,and Nomoto 1999) 2年目の平成12年度では、われわれがいままで指摘してきた進化経路上の実際の対応物が何かという問題に第一段階の決着をつけることができた。これは、まず、(4)1999年2月に6度目の爆発が観測された、回帰型新星U Scoの光度曲線を理論的に再現したことで、系の白色矮星の質量がIa型超新星爆発寸前であること。また、白色矮星とそれより重い主系列星からなる系で、昨年度に明らかにした進化経路の最終段階に対応するものであること、を明らかにすることができた。(Hachisu et al.2000a,およびHachisu et al.2000b)また、同じ白色矮星主系列星のペアであるところのV394 CrAもU Scoと同じようにIa型超新星爆発直前の星であること。白色矮星と赤色巨星のペアである回帰型新星RS Ophも同じように白色矮星の質量が理論光度曲線解析によりIa型超新星爆発直前のものに対応していること、かつ、昨年度にわれわれが提案した白色矮星+赤色巨星の系の進化経路の最終段階にあるものであることも同時に判明した次年度は、すべての回帰型新星の光度曲線の解析を行い、すべての回帰型新星がIa型超新星爆発直前の星なのかどうかを明らかにするつもりである。
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