1998年に、ラパルマ天文台の口径4.2mのウィリアムハーシェル望遠鏡で取得した、かみのけ座銀河団の銀河の分光、撮像データの解析をイギリスの共同研究者と協力して完了した。分光データから銀河団メンバーであることが確かな約450の銀河を同定した。これらの銀河に対して、位置、明るさ、色(B-R)、輝度分布を特徴づける有効面輝度と有効半径及び形状パラメータ、金属量の指標であるMg2吸収線強度、年齢の指標であるHβ吸収線強度、銀河内での色勾配をまとめたカタログを完成させた。これは、かみのけ座銀河団の確定メンバーの均質なカタログとしては世界最大のものである。 このカタログに基づいて、光度関数の暗い端を構成する矮小銀河の性質が、銀河周辺の環境に依存するか否かを調べた。矮小銀河を構成する星の分布情報を表す、有効表面輝度、有効半径、表面輝度分布の形については銀河団中心からの距離による相違は見られなかった。つまり、周辺環境の違いが矮小銀河の光度分布形状に及ぼす影響は小さいことを明らかにした。次に矮小銀河を構成する星の情報を表す色を調べた結果、銀河団中心からの距離が大きくなるに従って、色は青くなるという結果を得た。 銀河団の外側の矮小銀河ほど青いということは、系統的に星の金属量が低いか、銀河そのものが若いことを示唆する。銀河の色は金属量と年齢に対して縮退しており、色だけからそのどちらであるかを決定することは困難である。吸収線強度を詳しく調べた結果、金属量に敏感なMg2吸収線強度が銀河団中心からの距離によって減少することを見出した。一方、年齢に敏感なHβ吸収線の強度については目立った変化が認められなかった。これから、銀河団中心からの距離が大きくなるに従って矮小銀河の色が青くなるという現象は、矮小銀河の金属量が小さくなるためであるという結論を得た。
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