1998年にラパルマ天文台の口径4.2mのウィリアムハーシェル望遠鏡で取得した、かみのけ座銀河団の銀河の撮像データと分光データをイギリスの共同研究者と協力して解析これを完了した。観測した領域はかみのけ座銀河団の中心部から周辺部へと広い範囲にわたり、異なる環境下にある銀河の性質を調べるのに適している。 撮像データからはR=20等級までの約3000個の銀河を検出した。これらの銀河に対して、位置、明るさ、色(B-R)、輝度分布を特徴づける有効面輝度と有効半径及び形状パラメータを含むカタログを作った。我々の分光データに加え、文献より拾い出したデータも合わせて、銀河団メンバーであることが確かな約450の銀河を同定した。さらに、我々の分光データのある301銀河については、金属量の指標であるMg2吸収線強度、年齢の指標であるHb吸収線強度、などいくつかの吸収線強度を求めたカタログを作った。これらのカタログは、かみのけ座銀河団の確定メンバーの均質なカタログとしては世界最大のものである。現在その出版の準備を進めている。 このカタログに基づいて、光度関数の暗い端を構成する矮小銀河の性質を調べ以下のことを明らかにした。 (1)矮小銀河を構成する星の分布情報を表す、有効表面輝度、有効半径、表面輝度分布の形については銀河団中心からの距離による相違は見られなかった。つまり、銀河団内の環境の違いが矮小銀河の光度分布形状、すなわち骨格構造に及ぼす影響は小さい。 (2)矮小銀河の色は銀河団中心から周辺部に向かって青くなる。これは金属量の違いを反映していると推定される。また、矮小銀河と明るい巨大銀河に関することとし (3)巨大銀河(R=13等)から矮小銀河(R=19等)まで広い範囲にわたって、(a)金属量に敏感な吸収線の強度は等級が暗くなるほど弱まり、(b)年齢に敏感な吸収線の強度は等級が暗くなるほど強い (4)矮小銀河の平均的な年齢は、明るい銀河よりも若い。さらに、銀河団と比較するために (5)フィールド銀河の精密な光度関数を求めた。
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